昨年から、仙台市内の市民センターに招かれお話しをさせてもらう機会がめっきり増えました。依頼を受けるテーマのほとんどが「昭和時代に撮られた仙台の写真・映像をたのしむ」ことと「写真などの資料の活用法」です。元号が平成から令和に変わり、新しい時代を迎えたこともその一因なのでしょうが、もともと郷土史など地元の文化に目を向け学ぶ機会が多い市民センターの受講者が、さらにアクティブに資料の利活用を楽しむことに興味が広がっているようにも感じます。
2019年5月9日片平市民センター「写真で楽しむ昭和の仙台」
資料活用については、現在取り組んでいる事例のいくつかを紹介しています。
例えば、撮影された場所が分からない写真を市民の皆さんの記憶と推理で確定していく「どこコレ?」。震災以前に撮影された沿岸部のまちの風景写真をもとに、地元の方たちが想い出を語り参加者と交流する「3.11オモイデツアー」。仙台市全体を遺跡として見立て、地名・地形・地質の達人たちの目線で仙台の宝ものを探る「せんだいコンセキ発掘塾」。そして、これらの取り組みに共通している発想が、「自分の暮らすまちのものがたりを探すこと、そしてまちの新しいものがたりを、みんなでつくりあげること」です。
2019年4月28日「どこコレ?」
2019年6月23日「せんだいコンセキ発掘塾」
この言葉、実は約30年前に仙台市宮城野区が始めた『地元学』のマニュアルに記されているものです。無いものねだりではなく、あるモノ・コトを自慢する。そして、地元の人たちが地域の魅力を発見し、そのおもしろさを誰かに伝える工夫をする。その工夫こそが、現在、各地で関心を集めている「資料の活用」のヒントになるのではないでしょうか。
一方で、資料に記しても石に刻んでも人は忘れてしまうことを、私たちは8年半前に学びました。
記録(アーカイブ)する活動の核心は“資料そのもの”ではありません。「伝える」の「伝」は「人が云う」と書くように、“市民の関わりシロ”をいかに多く作り出せるかです。
資料の活用に関心が高まる今、収集、保存、編集を市民自らが行い、生活者目線による “市民協働アーカイブ”という新たなフェーズに入りつつあるのかもしれません。
他都市にさきがけ、仙台モデルとしてそのような場を整えていきたいものです。
3.11オモイデアーカイブ 代表 佐藤 正実
「3.11オモイデツアー」2017年12月10日仙台市宮城野区蒲生「舟要の館」にて
掲載/2019年6月17日河北新報夕刊